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楽しく生きましょう

 晴れだと思って洗濯物を洗って干したら曇りだった。でも外の空気は清々しくていい。わたしは窓を開けることがほとんどないから、この部屋の空気は常に停滞して、澱んでいる。
寝たのは明け方の四時で起きたのは八時。それからいろいろぐだぐだとして、十五時になっておなかがすいたので、外に出かけた。もう二年以上住んでいるこの部屋の周りのこと、わたしまだあんまりわかっていなくて、ふだんまったく行くことのない通勤ルートの反対方向、ちょっと有名なブーランジェリーのあることだって。さいきん知人に教えてもらって、徒歩圏内であることを知って、じゃあこんどの休日にでも行ってみようと思って。外はまだあんまり寒くなくて、半袖のニットにパーカーを羽織っただけの格好でも十分で、わたしは自転車を漕いでパンを買いに。自転車で行けばほんの三分の距離で、でも途中で信号があるから、ちょっと待ったり。ブーランジェリーはわたしの進行方向の向かって右側にあって、だから途中で横断歩道を渡らなければならないのだけれど、最初の横断歩道の信号は赤で、でもここをスルーして先に行ったとしてブーランジェリーまでの間にもういっこ横断歩道はあるのかなとか。わたしは知らなくて。行ったことがないから。だから信号を待ったり。そういう行き当たりばったりな感じ。空は曇ってて。人はあんまりいなくて。住宅街で。たまにへたくそなハモニカが聴こえたり。
 遅くに行ったから、もうパンの種類はあんましなかった。ちょっと乾燥気味のカンパーニュと、オリーブの入っているフォカッチャを買った。ここさいきん肌が荒れて仕様がなかったから、自宅でお酒をのむことをやめていたのだけれど、今日はお酒をのもうと思った。だからフォカッチャを買った。お酒もないのにフォカッチャなんてたべないから、フォカッチャを買ったのならばお酒をのむ。フォカッチャとオリーブオイルと塩があったら、いつまでだって白ワインをのんでいられるし。
 そういえば今年のボジョレー・ヌーヴォーの解禁日には、ひさしぶりにわたしそれをのんだ。赤はガッツリと「タンニンだぜえ」「渋みだぜえ」と訴えてくるものがすきだから、ヌーヴォーにはさほど興味がないのだけれど、解禁日付近のソワソワした感じとか、お祭りっぽい雰囲気とか、いろんなお店がフェアとかイベント組んじゃったり。そういう空気はわたしすきで。だから便乗できるときは便乗する。でもひとりで一本のもうと思えるようなものでもないから、誰かとごはんをたべに行ったときに、タイミングがあえば。毎年そんな感じなのだけれど。だからのむ年もあればのまない年もあるのだけれど。今年はちょうど解禁日に友人と渋谷のビストロでごはんをたべる約束をしていて。ワインリストにヌーヴォーの名前を発見して。たのんで。のんで。やっぱりぜんぜん好みではなくって。でもたのしかった。やわらかくローストされた鴨にもバルサミコのソースにもちっともあっていなくって、ぜんぜん赤って感じのしないあっけなさで、かろやかで、たよりなくて、かわいくって。
 そうじゃない、フォカッチャ。
 フォカッチャを買ったから、ワインを買わなければならなくて、だからいつも行く酒屋さんに寄ろうと思った。頭の中に地図を描いて、でも、だったらその前に、近所の肉屋さんに行こうとか。近所の肉屋は手作りの腸詰めやハムを売っていて、とてもおいしいので、たまに買って帰る。今日はそこに行って、ケーゼやブルストをいくつか買って。そこから酒屋さんで、ワインを数本買って。最後はセブンイレブンでリップクリームを買ったり。そんな風にあんまり寒くない、でも暖かくもなくて確実に冬である曇天の下、自転車でのんびりと走った。走って買いものをした。
 いまはカンパーニュを薄く切ったものにチーズを乗っけてたべてる。安い白ワインをのみながら。台所ではオニオンスープを煮込んでいて。皮をむいたまるのままの玉ねぎをラップでくるんで、レンジでチンして。その間に片手鍋でにんにくをオリーブオイルで炒めて。やわらかくなった玉ねぎを放り込んで、水とブイヨンを足して、ぐつぐつと煮込んで。煮込んで。煮込んで。台所からぶくぶくという音がする。気泡。たちのぼる泡。上昇するもの。上昇して弾けて見えなくなってゆくもの。ぶくぶく。ぶくぶく。
 役割を得たくない、と思った。なんらかの役割を得たくない。誰かにそれを割り振りたくもない。
 あなたはわたしになにかをして欲しいんだ。だからあんなことを言った。でもわたしはそれに応じることができない。応じたくない。応じられない。わたしはあなたのなにかにはなりたくない。いていいよ、と言われるのも、いて、と言われるのも、つらい。いてもいなくてもいいよ、とだけ、言われたい。なにものにもなりたくない。通り過ぎるものも掴めない。あるいは掴まない。気泡。気泡。ぶくぶく。スープはきっとおいしくなる。わたしはそれをのんで、それから、薬をのむ。月曜日から風邪をひいていて、体調が悪かった。でも、きちんとごはんをたべて、きちんと暖かくして、きちんと眠っていたら、よくなってきた。でもきのうちょっと生活のリズムを崩したら、ぶり返した。薬をのまないといけない。お酒はのんでしまったけれど。もうすこししてからでも。プラシーボでもいいから。わたしはよくならないといけない。もうちょっとやることがあって、それはいいことだね、音楽を聴いて。本を読んで。口を噤んで。まあるくやわらかくなって。

 静かに苦しみましょう。楽しく生きましょう。
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